東京2020の直前に企画されたタイムリーなドラマ。

物語は、1912年の日本人初のオリンピック出場から1964年の東京開催までの半世紀を描いたもの。
いだてん(=韋駄天)というのは、日本に古くから伝わる足の速い神様のことで、オリンピックで世界に通用する日本人選手の象徴として使われている。
もうひとつ、急激に国際化する日本が時代を走り抜けていくイメージも重ねているのであろう。

年配者は昔なつかしく観ることもできるが、さすがに1912年の話ともなれば、初めて聞くような驚きのエピソードも盛り込まれている。
前回の東京五輪のときには生まれていなかった世代の人たちにとっても、宮藤官九郎らしいユニークな発想の演出が満載で、抵抗なく楽しむことができる内容であった。

NHKの保持している秘蔵映像と、模型やセットと、VFXをうまく組み合わせて、古くさいながらも垢抜けた造りになっている。

時間軸は、まず1959年の東京オリンピック直前の日本橋の風景からスタートする。
現在、日本橋の上には首都高が通っているが、その首都高がまだ建設中で、もう少しで日本橋の真上の空が塞がれる、年配の人なら思わず懐かしく感じる映像だ。
前回のオリンピック招致の際に、建設を急ピッチで進める必要があったために、用地買収などの必要がない河川の上に高速を通したのである。
このため、伝統あるこの橋ですら、頭の上を道路が通ったのだ。

さて、2020年の招致活動は記憶に新しいが、1964年に向けても同じような活動をしていたのがわかる。
オリンピック開催地選考会で、猪瀬知事がやったような英語のプレゼンをする平沢和重というジャーナリストを演じているのが、星野源だ。
大手広告代理店の制作したビデオなどなく、スピーチだけで勝負している。
その東京招致活動の中心人物が、ダブル主役の一角である阿部サダヲ扮する田畑政治という男だ。

このように、登場するのは実在の人物がほとんどだが、個性派ぞろいの俳優陣が各々の人物像を非常に面白く演じている。

副題を「東京オリムピック噺」と言っているが、物語全体の語り部で、ふたつの時代を行き来する橋渡し役となっているのが、ビートたけしが演じる噺家・古今亭志ん生だ。

この彼の軽妙な語りを通じて時間軸は、1912年のストックホルム参加の時代に瞬間移動する。このように時代が50年戻ったときには、この志ん生が噺家になる前の若き日の姿・美濃部孝蔵を森山未來が演じている。

さて、列強の仲間入りをした日本は、ストックホルムのオリンピックに参加を持ちかけられるが、何しろ日本人にとって未知の世界。スポーツ競技、という概念すらない。
そもそも、そんな大会に出る必要があるのか、という議論が日本国内では巻き起こってしまう。

今にしてみれば笑っちゃうような反対意見のオンパレードである。

ーーそもそも体格の大きい欧米人に小柄な日本人が勝てるわけがない。
ーー負けるとわかっているのになぜ金を出すのだ。
ーーその欧米人ですら必死の形相で走っているのに、日本人が出たら死人が出る。

このころは日本は軍事国家。平和的な真剣勝負の意義すら、わかっていないのだ。

このような反対勢力をものともせず、日本人をストックホルム大会に送り出す役目を担うのが、日本柔道界のパイオニアでもある嘉納治五郎という人物であった。
この第1話のMVPは、武道家ながらも楽天的な、この愛すべきキャラクターを、体当たりの熱演で再現してくれた役所広司だろう。

そして彼は、まだ羽田空港がない時代に、羽田の広い土地で選手選考会を行う。そこで嘉納治五郎の目の前に現れた「いだてん」が、実際にストックホルムの大会に出場した、中村勘九郎が演じる金栗四三という快速ランナーだった。

満を侍して最終シーンでダブル主演のもうひとりが登場したところで、壮大なドラマのウォーミングアップは完了。
次回はストーリーが、いだてんのごとく走り出すに違いない。

P.S.
オープニング映像で、隅田川を阿部サダヲが背広姿で泳いでいて、びっくり。

今から観るには:「いだてん〜東京オリムピック噺〜」

  • 再放送:毎週土曜日13:05〜
  • NHKオンデマンド(見逃し見放題パック月額972円・税込)

基本情報:NHK大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」第1話:夜明け前

  • チャンネル: NHK総合
  • 放送日時(第1話): 2019年1月6日(日)20:00〜21:00
  • 出演: 中村勘九郎 阿部サダヲ 生田斗真 杉咲花 満島真之介 山本美月 近藤公園 武井壮 ニコラ・ルンブレラス 森山未來 神木隆之介 橋本愛 峯田和伸 川栄李奈 小泉今日子 星野源 松坂桃李 松重豊 杉本哲太 小澤征悦 古舘寛治 平泉成 竹野内豊 役所広司 ビートたけし 小泉今日子 綾瀬はるか
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