やる気のないお気楽な刑事と言う、これまでの伝統的な刑事ドラマの主役の常識をくつがえす斑目勉(まだらめつとむ、=中島健人)と、その指南役・煙鴉(けむりがらす、=遠藤憲一)のコンビの好演が光る、この秋の注目作。

会心の一作だった前回の第3話に続く第4話で、新米刑事・斑目が挑むのは、史上最強のスリ、“機械屋銀次”こと大文銀次(だいもんぎんじ、=杉本哲太)。

実際に財布をスラれる映像を見て、今度から電車に乗るときは財布をしっかりと鞄の奥底にしまおう、と思ってしまう回だった。

今回は、斑目が所属する捜査三課13係に、スリの中でもプロ中のプロと言われる屈指のスリ集団が、都内で開催されるコミフェスの来場者を狙って荒稼ぎする、と言う情報が入る。
本当にありそうな怖い話。コミフェスのマーケットでの販売は現金決済なので、かなりの額の現金を持った来場者で混雑する。これはスリにとっては格好の獲物が集まっている狩場なのだ。

そして、引退したはずの“機械屋銀次”も東京に出てきていることがわかる。

今回クローズアップされるのは、これまでパッとした活躍をしてこなかった13係の左門陽作(さもんようさく、=板尾創路)。彼はこの道ひとすじの「モサ」と呼ばれるスリ専門の刑事なのだ。斑目は彼とチームを組むことになり、左門からモサの基本を教え込まれる。

左門は、目の前でスリの現行犯を捕まえて見せ、斑目を驚かせる。

ただ、左門のやり方は、ひとすら足で稼ぎ、自分の眼で確かめる昔流。
「スリ眼」と言われるスリ特有の目つきを見抜いて尾行するのだが、見分けられるようになるまで、最低でも3年もかかると言う。
何でもネットでサクっと検索して行動する習慣が身についている斑目は、この気の遠くなるような左門の「モサ道」にはついていけない。

斑目の陰の師匠でもある伝説の大泥棒・煙鴉(遠藤憲一)は、一流のモサとスリとは切磋琢磨の真剣勝負をしているんだ、と斑目に説く。昔は完全な徒弟制度で、スリもその師匠から技を伝授されたのだと説く。

そして、斑目と左門は、ついにバスの中で銀次の犯行を目撃する。
銀次は警察に気づくと、すばやくその財布を他人のバッグに放り込んでしまい、証拠を残さない。

銀次は、左門の前で、こう告げる。
こんなレベルの相棒をつけているようでは今度のコミフェスはやられっぱなしだ、と。
憤慨してつかみかかる班目に、銀次は技を見せつける。
ちょっとしたスキに斑目から財布を奪い、すぐ傍にあった自転車の前カゴにその財布を放り込んで、その場を去っていったのだ。

スリにも超一流のプロがいて、モサにも同じように何十年も修行したプロがいて、スポーツの因縁のライバルのようにせめぎ合い、ある意味「共存共栄」している。これが警察の裏社会に実際にある話なのかは興味の湧くところでもある。

左門には、銀次も一目を置いていたモサ中のモサとも言える師匠がいた。その師匠から左門が叩き込まれたやり方が、何十年もかけて自分で技術を身につける、ということだった。

人からあれこれ教わったことはすぐ忘れる。
自分から覚えようとしなければダメだ。
ネットで検索したことなんてもっと忘れる。
近道ほど忘れるんだ。

その師匠は、その世界では認められていたものの、警察組織の中では出世もせずに、ひっそり引退し、昨年他界したと言うのだ。
お気楽な班目は、とてもそんな人生を歩む気はないだろうが、そんなモサの生き様をリスペクトし始める。

班目は最初、自分が左門のアシスタントについたのは、今回のコミフェスの件に対して、自分が抜擢されたと思っていた。
ただ、実際は左門がミスをしたことに対する「罰ゲーム」として、厄介者の自分が当てがわれたことを知り、打ちひしがれていた。

果たしてそこまで自信を失った班目に一発逆転のチャンスはあるのか?
最終シーンの、ゆりかもめの中でのスリチームによる連続技と、13係総出の大捕物が見ものである。

そこには、スマホネイティブの班目くんにしかできないことがあった。

そして、孫のために引退した銀次がなぜ戻ってきたのかがわかる、ちょっと深い第4話だった。

P.S.
皇子山さん、せっかく煙鴉を追い詰めたのに、もったいない。

ときおり流れる音楽が、中島健人くんの生まれるずっと前に放映されていた昭和時代の刑事ドラマ「太陽にほえろ」にそっくりなのが笑える。

今から観るには:「ドロ刑 -警視庁捜査三課-」

基本情報:日テレ土曜ドラマ「ドロ刑 -警視庁捜査三課-」 第4話・中島健人・遠藤憲一主演

  • タイトル ドロ刑 -警視庁捜査三課-
  • チャンネル 日本テレビ系列
  • 番組公式サイト トップ あらすじ 人物相関図 スタッフ
  • 放送日時(第4話) 2018年11月3日(土)22:00〜22:54
  • 出演
    • 斑目勉・まだらめつとむ(新米刑事):中島健人 WikipediaWikipedia
    • 煙鴉・けむりがらす(伝説の大泥棒):遠藤憲一 WikipediaWikipedia
    • 小平美希・こだいらみき(捜査三課):石橋杏奈 WikipediaWikipedia
    • 皇子山隆俊・おうじやまたかとし(捜査三課):中村倫也 WikipediaWikipedia
    • 宝塚瑤子・たからづかようこ(捜査三課):江口のりこ WikipediaWikipedia
    • 細面隆一・ほそおもてりゅういち(捜査三課):野間口徹 WikipediaWikipedia
    • 霞沙織・かすみさおり(科捜研):田中道子 WikipediaWikipedia
    • 宵町時雄・よいまちときお(バーのマスター):生島翔 WikipediaWikipedia
    • 勝手田利治・かってだとしはる(捜査三課):丸山智己 WikipediaWikipedia
    • 左門陽作・さもんようさく(捜査三課):板尾創路 WikipediaWikipedia
    • 鯨岡千里・くじわおかちさと(捜査三課係長):稲森いずみ WikipediaWikipedia
  • 第4話ゲスト
    • 大文銀次・だいもんぎんじ(史上最高のスリ“機械屋銀次”):杉本哲太 WikipediaWikipedia