大ヒットした米国ドラマ、それも英国王室に嫁いだメーガン妃がかつて出演していた作品が原作と言うことで注目が集まった本作品。
当然、原作のファンからは否定的な意見もあるらしいが、比較して同じ感動を得られることが必須でもないだろう。
リメイクではないが、SEX & THE CITYにインスパイアされた原作を元にした吉高由里子主演ドラマ「東京タラレバ娘」も、東京が舞台であるからこその面白さや感動に満ち溢れていた。

さて今回は、豪腕弁護士・甲斐正午(織田裕二)と頭脳明晰な彼の片腕・鈴木大輔(中島裕翔)のコンビが成立した第1話に続く、第2話。

スタイリッシュでかっちりした骨格のあるドラマになってきた。奇をてらったところはないが、最後までテンションが下がらずに楽しめる。

原作は、一般の人でもロイヤーとのつきあいや訴訟が身近な米国社会を舞台にしている。反面、この日本では、ほぼ多くの視聴者が法的紛争の経験がないはず。そういうことに配慮した題材かも知れないが、今回の案件は、セクハラ。

ドラマは、看護師が大学病院院長から愛人になることを迫られ、それを拒否したら解雇された、という相談を大輔が受けることから始まる。

許せない事件である。

ただ、セクハラには物証が乏しく、なかなか立件しにくい。
また、同じ事務所のパラリーガル、聖澤真琴(新木優子)の前の職場での経験談から、セクハラに対して女性は泣き寝入りしなくてはいけないことが多い、という現実を大貴は実感することになる。

甲斐正午は、被害者女性に同情するな、勝てる勝負だけをしろ、というドライな指示をする。

吉高由里子主演の「正義のセ」なら正義感に燃えてなんとかしようと張り切るところだが、おそらく実際のプロの法律家も甲斐弁護士のようなドライな判断をすることもあるかもしれないというリアリティを感じる。

反面、大輔は何としてでも解決しようとするが、空回りしてうまく行かず、挫折する。

その場を立ち去ろうとする大輔を呼び止めて甲斐が放った一言がグッと来る。一匹狼で冷徹な性格という設定の彼のなかにある優しさと人間味がちらっと見えた瞬間だった。

甲斐は、大輔を突き放しながらも、応援しているのだ。そして、このセクハラ案件は最後までやれ、と言う。

いっぽう、この第2話には副筋がある。
甲斐弁護士が顧問弁護士を務める銀行で、資金の不正流用をした部長がいる、という内部告発がある。

その決定的証拠となる写真を持ってくる甲斐お抱えの情報屋が、第1話に続き「カメラを止めるな」の監督役の俳優、濱津隆之である。
ここで止めずに毎回出演してほしい気もするが、いかがだろうか。

この2つの事件が、最後に思いがけない形で繋がる。
すばらしい。
第3話も楽しみである。

あえて言えば、大輔の頭脳明晰さを発揮するチャンスがあまりなく、単なるできない弁護士のようになっているところが気になる。
また、所長である幸村チカ(鈴木保奈美)と甲斐をライバル視する蟹江(小手伸也)は存在感抜群ながら、秘書・玉井伽耶子(中村アン)とパラリーガル・聖澤真琴(新木優子)の役柄の重みや絡みが少し物足りない気もする。

P.S.
原作の米国ドラマでは、主人公のハーヴィーが「オレはクローザーだ」と言うが、まさに交渉をクローズ(終わらせる)法律家と言う意味。野球の世界では「クローザー」と言うと最終回に出てきて圧倒的な投球で敵の攻撃をシャットアウトし、試合を終わらせる役目の投手のこと。
甲斐の部屋にニューヨークヤンキースの田中将大投手(マーくん)のユニホームが飾ってある。マーくんは、クローザーではなく先発投手だが、この日本版では、甲斐がマーくんの顧問弁護士であるという設定らしい。

そして今回、蟹江(小手伸也)が無類の猫好きであることが判明。

基本情報:フジテレビ月9「SUITS/スーツ」第2話 – 織田裕二・中島裕翔

今から観るには:「SUITS/スーツ」