前回のレビューでは触れなかったが、実はひとつ前の第2話の最後の1分間に、ドキッとするワンシーンが割り込んできた。ふつうの犯罪ドラマなら「これで一見落着」と収まるはずのところに、ある意味「余計」な一撃が浴びせられ、幕を閉じたのである。

そして、この第3話でも、このまま終わりかと思った最後の1分間、予定調和破りの一撃が浴びせられた。

第1話のオープニング映像で、井沢範人(沢村一樹)が犯人を追い詰めるシーンも衝撃的だったが、この第3話のラストで、その井沢の心の奥底に潜む凶暴さが、またしても垣間見えたのだ。

沢村一樹から本来イメージするのは、どちらかと言えば、お気楽なキャラクター。このドラマでは、それに加えて頭脳明晰で実行力があり、さらに激辛のスパイスとして実は非常に凶暴な側面を持っているのが、この井沢範人の人物像である。そのプラスアルファの要素が、本作の持つ深みのひとつともなっている。その彼の中でわずかな領域を占める激辛な人格が起こす行動が、警察官であればやってはならない行為であるとはわかっていても、視聴者の密かな願望であったりするからだ。

さて、この第3話。
引き続き、警視庁が水面下で開発を進めるAI技術を駆使したコンピューターシステム「ミハン」によって、まだ見ぬ未来の犯罪が予想される。しかも、飛び降り自殺を図ったあと意識不明のまま入院している女子大生・槻真帆(柴田杏花)が、殺人事件を起こす可能性があるという、厄介な出力結果だ。

この昏睡状態の女性が、なぜ人殺しの準備なんかしているんだろう。誰かが彼女の代わりに、飛び降り自殺に追い込んだ原因となった人物に、復讐をしようとしているのだろうか?それとも、自殺未遂に追い込んだ人物が、証拠隠滅をしようとしているのだろうか?

過去の事件の真相が徐々に浮かび上がってくるが、新たな事件を起こす可能性のある危険人物は、なかなか見破れない。前回も書いたが、このドラマの、少し物足りないところは、おそらくは億単位の金がかかっていそうな大げさなコンピューターシステムは、今回も冒頭で「お題」を出すだけで、それ以降の捜査では何の役にも立っていないところだ。
真相を突き止めたのは「ミハン」ではなく、井沢の推理力と指導力、そして山内徹(横山裕)、小田切唯(本田翼)、田村薫(平田満)などの捜査チームのスタッフが別人になりすまして「相手先」の懐に潜入する、捜査官たちの勇気ある行動力だった。緊迫感あふれるクライマックスの場面は見ものである。ベテラン捜査官・田村は、またしても高い経験値を生かして九死に一生のピンチを救う。

そして、最後の1分。
あっけに取られるだけだった第2話に比べて、この第3話では、少しだけ誰の仕業かをチラ見せしている。
おそらく第4話でも、同じことが起こるんだろう。

危険人物をあぶり出す才覚に恵まれた優秀な捜査官でありながら、本人もある種の危険人物である井沢範人(沢村一樹)は、この先どうなってしまうのだろうか。それもこのドラマの見どころである。そして、ミハンシステムを推進する東堂定春(伊藤淳史)の首の傷の謎も気になるところだ。

P.S.
過去の事件に関与している大学生が経営しているというカフェ、バカリズム脚本の名作ドラマ「黒い十人の女」で、カフェラテを顔面にぶっかけ合う名場面の舞台と同じ場所じゃないかな?

基本情報:フジテレビ月9「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」第3話 – 沢村一樹 主演