このドラマは、タダモノではない。
1994年に出版された同名小説を元に、100人以上の女性にリサーチした「夫婦あるある」ネタを盛り込み、より2018年の現実感のあるドラマにしたもの。
ただ、それだけではない。
原作をリスペクトしながらも、かなり大胆に、オリジナルには全くなかったショッキングな修羅場シーンが挿入されている。
第3話のバーベキュー事件、第4話のメンチカツ事件、第5話の旅先での鉢合わせ事件など。
これらの名場面を生み出した、脚本家・制作スタッフの創造力と推進力には脱帽するばかり。

そして、今回の第9話は、予告編で知らされた「緊迫の四者会談」に期待が膨らむ。

法的にまだ夫婦かどうかの差異はあるものの、どちらも完全な家庭崩壊、修復不可能な状態に陥ってしまった、真弓(中谷美紀)、秀明(玉木宏)、綾子(木村多江)、太郎(ユースケ・サンタマリア)の4人が、第6話のマンションでの対決以来の「全員顔合わせ」をすることになる。
しかも場所は、真弓と秀明が足繁く通った馴染みのカレーショップ「こまち」の10周年パーティーという、おめでたい席。
そして、真弓(中谷美紀)の誕生日でもある。

大波乱を起こすには、絶好のお膳立てだ。

ただし今回は、これまで視聴体験してきたほどのサプライズはなかった。
パーティーの客を巻き込んでお祝いの場をぶち壊しにしてしまうとか、この夫婦二組による「朝まで生テレビ」ばりの噛み合わない激論が長々と交わされるとか、やろうと思えば、いかようにも事態をエスカレートさせる悲惨な場面を演出することはできたはず。
ただ、これまでのような驚愕の事態には発展しなかった。
秀明の職場の後輩・森永桃(高橋メアリージュン)や、 真弓の親友・愛川由紀(笛木優子)も店にいたのに、その設定もちょっと空振りしてしまった印象。
もちろんドラマは、現実離れしたドタバタを楽しむだけのものではない。
ただ、今回は「緊迫の四者会談」と言う事前情報に期待感が高まり過ぎていた。

そのあとの、シーフードレストランで真弓という人物について語った茄子田太郎の言葉があまりに適切であったことや、綾子が桃にかぶりついて果汁がしたたり落ちるシーンのグロテスクな映像の方が、深く印象に残った回であった。

P.S.
次週が最終回かと思いきや、あと2回あるとのこと。
FIFAワールドカップを前に最終話を迎えるドラマが多いなか、日本中がサッカーで混沌としたなかで、最後にどんな着地点を迎えるか、楽しみ。

基本情報:「あなたには帰る家がある」第9話

今から観るには:「あなたには帰る家がある」