難易度が非常に高いものの、何とか成功する見込みのある心臓の手術が行われる。
うまく行ったと思った瞬間、予想もしなかった事態が発生し、患者の命が危険に晒される。
と思った瞬間、自動ドアが開く。
手術室の悪魔、渡海征司郎(二宮和也)の登場だ。
途中から手術に割り込んで入って、風前の灯となった患者の命を救う。
それが、このドラマのお約束パターンだった。

さすがにこの繰り返しばかりじゃ、そろそろ飽きが来るかな…今回はいかに。
これまでは、医療機械が巨大化したり、そもそも渡海医師が手術に参加することができないような状況に追い込まれたり、問題の難易度を上げることで、視聴者の心を揺さぶってきた。
ところが、この第7話で投げられたボールは、ちょっとした変化球だった。

今回、渡海医師のルール破りな行動は、これまで所属していた病院を飛び出し、教授同士が理事の地位を巡って争っている相手先の病院まで巻き込んで、ますますエスカレート。
予告編で渡海医師が「誰だよ!」と叫んでいるのが気になったが、彼のこの一連の行動は、その「誰」を解明するためのものだった。

刑事ドラマは、まず海辺で遺体が見つかるなど、最初に明らかな犯罪がわかっていて、真犯人を突き止める、というのが定番のストーリー運びだ。
医療ドラマは、助かりそうもない患者の困難な状況がまずあって、天才的な医師がそれを奇跡的に助ける、というのが定番である。
ただ今回は、このような解決をしなければならない課題すら、よく見えて来ない。
そのまま最終局面まで進み、小田和正のエンディングテーマが流れ始める前の最後の数分で、渡海医師のこれまでの不可解な行動の謎が一気に解き明かされる。

渡海征司郎というキャラクターが、さらにブレのない力強い存在に成長した回であった。

本人のドラマの中の台詞にもあるが、彼は一貫して、患者を助けることを優先させている。それが医療の基本中の基本だ。ただ、その基本さえも無視してしまうのが、医療界の大人の事情。

これまでの回では、高級料理店で医師を接待しているシーンの印象が強かった治験コーディネーターの木下香織(加藤綾子)が、今回はその大人の事情に一撃を食らわせる行動に出る。
この第7話もMVPは相変わらず渡海医師だが、香織も準MVPと言えるようなインパクトを残した。

そして、第1話からたびたび出てくる、「ペアン」が映り込んでいるレントゲン写真については、まだまだ謎のまま、次回以降に持ち越された。

天才的な医師が、人間の肉体の病魔をその神業で鮮やかに取り除く。
このストーリーの背後にある、人間のエゴや不正という病魔までを彼は取り除けるのか。それとも取り除けないまま終わるのか。見ものである。

P.S.
シソンヌの長谷川忍が、非常に経験値の高いホンモノの医師に見えた。

基本情報:TBS日曜劇場「ブラックペアン」第7話 – 二宮和也 主演

今から観るには:TBS日曜劇場「ブラックペアン」 – 二宮和也 主演