このドラマはこれまで、ハイテク医療か、熟練した医師のメスさばきか、という対立軸がひとつのテーマだった。
その論争の中心にあったのが、手術をする医師が持って使うハンディタイプの医療機器「スナイプ」だったが、今回から「ダーウィン」という、それとは比べ物にならない図体の大きい医療ロボットが登場する。
前回の手術が成功したはずの、開胸手術や輸血が不可能な7歳の女の子が、実はまだ問題を抱えていたことが発覚し、そのロボットが持ち込まれるのだ。

そのダーウィンは、トラックに乗ってやってくる。
ハリウッド映画の映像ほどではないにしろ、単なるドラマの小道具とは思えない、金のかかっていそうな装置だ。
しかも、米粒に字が書けるような精密な動きができる。

それを見た渡海征司郎(二宮和也)が「コメは食うもんだろ」と言い捨てて去る。

すでに第5話なので、このドラマのお決まりの話の運びとして、この大袈裟な機械による手術が失敗するんだろう、と感じる。
そして、最後に渡海医師が現れて奇跡的な神業で患者を救うんだろう。

まあ、そのとおりだったのだが、輸血が不可能な女の子の、それも機械による手術が頓挫して大量出血が始まった状態から、どうやってリカバーするのか。
その超難関を突破するために渡海医師が仕込んでいたアイデアが鮮やかだった。
手術後に「これくらい当然だよ、医者だからな」と言うカッコいい台詞がキマった。

相変わらずドラマの中での語り部は、研修医の世良雅志(竹内涼真)であることに形式上は変わりはない。

しかしながら、渡海医師と対立しながらも、その手腕や医療に対する姿勢に一目を置き始めた高階権太(小泉孝太郎)が、次第に視聴者目線に近い物語の中心になりつつある。
彼は、ハイテク医療の推進役であり、医療論文によって得られるインパクトファクターという点数稼ぎを第一義とする西崎啓介(市川猿之助)の協力者でもありながら、その反面、医師として小さな女の子の命を救うべきだという使命感との間で揺れ動く。
その複雑に入り混じった心理の動きを、小泉孝太郎が絶妙に演じ切っている。

次回はついに、これまでは渡海医師に電話をかけてきただけだった、母親役の倍賞美津子が登場する。

P.S.
天才的なスキルを持つ医師が一人いても、救うことのできる患者の数は物理的に限られている。
ハイテク機器によって、そういう高度な医療が世界中どこでもできるようになって、救えなかった命が助かる。
という、このドラマで扱っているテーマは深い。
ただ、このドラマで何度も映し出されるような、取り返しがつかなくなる事態になる前に、予見や予防をすることができる医療が発展すればもっといいはず。
西城秀樹さん、岸井成格さん、朝丘雪路さん、星由里子さんという訃報が続いた、この週に感じたことだった。

基本情報:TBS日曜劇場「ブラックペアン」第5話 – 二宮和也 主演

今から観るには:TBS日曜劇場「ブラックペアン」 – 二宮和也 主演