二宮和也が扮する渡海(とかい)征司郎は、ドラマの中で「オペ室の悪魔」と称されている。
偶然とは言え、土曜日の「Missデビル 人事の悪魔・椿眞子」に続いて、日曜日も「悪魔」の登場だ。

さて、前回も書いたが、血を見るのが苦手な人は、日曜夜の一家団欒での食事は済ませてから観たほうがよい。
血なら「ドクターX」でも出てくるが、もう1点、このドラマは、あまり楽しいタイプの話ではない。
かなり毒が強い。

今回、渡海医師は患者に向かって「手術はバクチですよ、やってみないとわからない」とまで言ってのける。
過激な言い方のように映るが、よく考えると、この患者のこの状況なら、そう言うべきだった、というのに気づく。

ストーリーの基本は結末が推測できるようなお決まりのパターン。

他の医師が、非常に困難な外科手術に挑む。
もう少しで失敗と言うところで、渡海医師がオペ室に現れる。
神技のような手さばきで、絶命寸前の患者を救ってしまう。

その流れになるのがわかっていても、つい引き込まれてしまう。
そんな魔力を持った作品である。

人間的な感情をときおり見せるドクターXの大門未知子(米倉涼子)と違い、渡海征司郎(二宮和也)は内面を見せないことを徹底している。そのミステリアスなキャラクターが極めて完成度が高いのは言うまでもないが、彼を取り巻く俳優陣の役作りにも全くスキがない。

直接対峙する研修医の世良雅志(竹内涼真)が、患者の命を左右する医療の怖さにおびえる気持ちの噴出のさせ方。
全体を俯瞰で見ている教授・佐伯清剛(内野聖陽)の不気味さ。
渡海医師と真っ向から衝突する高階権太(小泉孝太郎)の、尊大な態度の敵役としてだけではない、今回垣間みせた別の人格。
出番は少ないが、猫田麻里(趣里=水谷豊・伊藤蘭の娘さん)の放つ台詞が、ドラマを左右する重い一言となる。

観ている者を惹きつけるのは、これら、登場人物全員の利害や気持ちのぶつかり合いが、格闘技を観ているかのような迫力を持って表現されているからであろう。

P.S.
もうひとりのキーパーソンである、治験コーディネーターの木下香織(加藤綾子)。
「治験コーディネーター」(CRC)で検索してみると、実際に医療機関で募集をしている職業であることがわかる。
これは、認可がまだされていない新薬や、今回は医療機器などが実用化されるための臨床試験を、製薬会社や医療機器メーカー、医療機関、患者の間に立って調整する役割。
第1話のシーンで香織が、いかにも高そうなレストランで打ち合わせ(接待)をしているかと思ったら、恵比寿ガーデンプレイスのミシュラン三つ星の常連フレンチ「ジョエル・ロブション」だった。
さらに、第2話の食事シーンは、中目黒にある天ぷら「天雅」という店。
どちらも、おそらくふたりで行ったら5万円では済まない超高級店。
公式サイトを見ると、ミシュランガイドと番組でタイアップしていることが判明。
どうせなら番組クイズでお店にご招待してほしいものだ。

基本情報:TBS日曜劇場「ブラックペアン」第2話 – 二宮和也 主演

今から観るには:TBS日曜劇場「ブラックペアン」 – 二宮和也 主演